意合文 その3

前回までの例に加えて、いくつかことわざや成語の例を挙げて、
中国語の意合性を見てみたい。

★不到长城非好汉,不吃烤鸭真遗憾
チョウジョウニ イタラザラバ
コウカンニ アラズ コウアヲ
クラワザラバ マコトニ イカンナリ

(北京まで来て)万里の長城に行かなければ、
立派な男子とは言えない。北京ダックを
食べないのは、本当に心残りである。

前半部分は有名な諺で、よく耳にする。後半はどこかの
北京ダック屋のCMだと思うが、これもときどき聞く。
文末はhànで、韻を踏んでいる。

★车到山前必有路 有路必有丰田车
クルマ サンゼンニ イタラバ カナラズ ミチ アリ
ミチ アラバ カナラズ トヨタノ クルマ アリ

車の眼前に山があって、行き止まりだと思っても、
必ず道はあるものだ(万策尽きたと思っても、解決策は
常にある)。道のあるところには、必ずトヨタの車が
あるものだ。

前半は良く知られたことわざで、後半はトヨタが数年前、
中国でテレビ宣伝をしたときに、付け足したキャッチ
フレーズである。

★不见不散
マミエ ザラバ チラ ズ

会わない限り、その場から離れない。

テレビの連続ドラマの題名にも使われたので、ご存知の
方も多いと思うが、待ち合わせの約束をするときの
常套句である。早く着いたほうは、約束の時間が
過ぎても、相手が来るまで待ち続け、遅れたほうも、
どんなに遅くなってもいいから、絶対にその場所に
行きましょう、という約束をするときに使う。

さて、これらの例に共通する点は何か。それは「条件」を
表す部分(前半部分)に、何のマーカーもない点である。
日本語なら、「もし〜〜なら/たら/だったら/であれば」の
組み合わせで条件を表す。「もし」の方は省略可能だが、
うしろの助詞の方は省略できない。朝鮮語も日本語と全く
同じ振る舞いをする。ヨーロッパの言葉は、if-clauseとか
称して、
If the sun should rise in the west
(もし太陽が西から昇ったら)
のように、ifで導くか、または古式豊かに
Should the sun rise in the west
のように、主語と活用している動詞をひっくり返して、
この部分が条件節である事を明示する。

中国語にも「如果」だの「假设」だの「万一」だのと
山のように、ifに相当する接続詞があるのに、引き締まった
文体では略され、それに代わるマーカーが明示されない。
なので、文体に即して、意味に合うように理解しましょう、
というのが、中国語独特の意合法になる。例えば

你不去,我去

を、アナタ イカナイ、ワタシイク・・・A
と、気の抜けたビールのように訳してはダメで、
「君が行かないんなら、僕が行くよ」・・・B
というように解釈しましょう、ということである。
ただし、ややこしいことに、Aの訳になる可能性も
100%は排除できない。Bの場合がほとんどだが、
例外もありうる。それが意合法の意合法たる所以である。

★本日の一文

以权利合者 权利尽而交疏
権力や利益のために集まる者たちは、
それらがなくなったときには、疎遠になる。

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