漢字の並べ方

単語の並べ方に規則があるのは当然だが、中国語ではひとつひとつの
漢字の配列にも、けっこう細かい規則がある。知っている方が学習に
おいて有利だと思う。規則は2つあって、ひとつは、すべての言語に
共通で当たり前の内容、もうひとつは中国語独特の漢字配列の規則に
なっている。
規則1:漢字は、その意味と文法上の要請に従って並べる。
規則2:上記をクリアしたあとは、漢字は声調の順番に並べる。

1の当たり前の規則が2よりも優先順位が高い。例えば「我」と
「爱」と「你」という漢字を使って、「I love you」の意味を
表したかったら、「我爱你」とする。これを「你爱我」や
「我你爱」とすると、意味が変わってしまったり、文法的に
間違いになったりする。1をクリアしたあとは、今度は2の
出番になる。1をクリアしたあと、というのは物事を羅列する場合の
ことである。「机の上に鉛筆と消しゴムがある」といっても、
「机の上に消しゴムと鉛筆がある」といっても、大勢に影響はない。
名詞の羅列以外に、動詞や形容詞もその対象になる。cf「大きくて
白い石」、「白くて大きい石」、「食べたり飲んだり」、
「飲んだり食べたり」etc.。
こういうときに中国語の漢字は声調の順に配列されますよ、という
規則である。ただし、厄介なことに、この規則はつい最近決めた
わけではなく、大昔からあるため、「声調」は古代の声調、という
ことになる。前回の記事「入声字」のところで、現代と昔の声調の
違いについて詳しく書いたので、内容はそちらを参照していただく
として、下に簡単に対照表と、日本語の音読みから「入声字」を
探る方法を再掲する。
1声/  陰平と一部の入声
2声/  陽平と一部の入声
3声/  上声と一部の入声
4声/  去声と一部の入声

入声:漢字の音読みで、「カタカナ2つ以上で、最後の字がキ、ク、
チ、ツ、フになるもの(ただし「フ」は、旧かな使い)」

この2つの規則で全体の漢字配列の90%以上カバーできる。
それでも若干の例外が残るのは、言語は自然科学でないので、
しかたのないところかもしれないが、やはり残念である
(「大小」など、一部はこの規則にはずれている)。
 
さて、これだけの知識を持って、実際に語句を検証してみる。
日本語のやまと言葉では「横断歩道はミギヒダリをよく見て
渡りましょう」のように、「ミギ」を先に言う。漢字語では
「左右」で、「ヒダリ」が先に来る。これはご本家のほうで
「左右(zuǒyòu)」というからである。では、中国語はどうして、
この順番に並べるかというと、「左」が上声で「右」が去声
だからである。「長いと短い」は「chángduǎn」で、陽平と上声、
「太いと短い」は「粗细cūxì」で、陰平と去声。「重いと軽い」は
「qīngzhòng」で、陰平と去声、「権利と責任」は、「权责quánzé」で、
陽平と、「責」は「セキ」なので、入声、「起伏qǐfú」で、去声と、
「伏」は「フク」なので、入声、「苦乐kǔlè」は、上声と「楽」は
「ラク、ガク」なので、入声、「急ぐとゆっくり」は「缓急huǎnjí」で、
上声と、「急」は、「キュウ→キウ→キフ」なので入声(古音はkip、
広東語はkap,)というように、羅列の場合は陰平・陽平・上声・去声・
入声の優先順位に従って並べられている。

次回は、4字成語などの例で、規則1と2が絡まっている例を見てみたい。

★ 本日の一文
命,乃是失败者的借口
运。乃是成功者的谦词

運命、それは失敗した者の言い訳
幸運、それは成功した者の謙遜


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