ピンイン

もうすぐ年が明ける。家の周りで花火と爆竹の音が
かまびすしい。来年は4月が閏月で2回繰り返され、
1年が384日となる。

ピンインに対する感想を学習者に尋ねると、すこぶる
評判が悪い。非常に覚えにくく、発音の難しさと
あいまって、学習の足かせになっている、という
のである。
確かに私もあまりいい出来ではないと思う。注音
字母とか、ウェード式とかの方が、整合性に優れて
いると思う。しかし、いまさら変更はできない。
必死で習得した幾千万同学の血と涙の努力を無に
するわけにはいかないのだ。このまま突っ走る
しかない。ただせめて制定する前に、私にひとこと
ご相談があればもう少しマシなものを提案させて
いただけたものを、とは思う。

ピンインの構成はわかってしまえば極めて単純である。
ひとつの音節(bingとかzhuanのようなかたまり)は
語頭の子音とそれ以外の部分に分かれる(b+ ing,
zh+ uanのように)。このふたつの部分は、1文字で
表されるものもあれば、複数の文字で表される
ものもある。学習者は英語やローマ字からの連想で、
形態がよく似たかたまりは、音も同じようによく
似ているだろうと思ってしまうようだ。ここが
落とし穴だと思う。
例えば、ianとiangは、かなり音が違う、決してianに
gの音を加えたものがiangになるわけではないのである。
語頭の子音も、それ以外の部分も総数はそれほど多く
ない。マトリックスの組み合わせで表にすると
25x38もあり、多いように思うが、実はこの表が
穴だらけで、実際のかたまりは400種類に満たない。
したがって、語頭子音とそれ以外の部分の音を理解し、
くりかえし練習すれば、全貌を掌握することができる。
あくまでも、英語や日本語ローマ字の呪縛から逃れる
ことが重要だ。

ピンイン作成に携わった人を弁護する立場でいうと、
制定当時は、やむをえない事情があった。当時は
ワープロもパソコンもなく、活版印刷ではスピードに
欠け、結局イギリス人、フランス人入植者たちが
当時使用していたタイプライターを活用するしか
なかったのである。つまり、中国語の発音を西洋の
アルファベットで表現できることが最優先の条件
だった。ところが系統の異なる2言語を同じ文字で
表すのは実はとても難しく、多くの矛盾をはらんで
しまう。ペルシア語のアラビア文字表記、タイ語の
デーヴァーナーガリ表記、日本語の万葉仮名、
朝鮮語の吏読、ベトナム語のチュノムなど、いずれも
この仲間である。

ともあれ、外国語学習には骨の折れる発音練習が
つきもので、中国語では発音を確実にするため、
ピンインの習得が不可欠である。しかし同時に、
中国には漢字の読み書きができても、ピンインの
読み書きができない人が何億人もいるという
事実も覚えておいてよいと思う。

★本日の一文

过尽千帆皆不是,斜晖脉脉水悠悠

たくさんの船が目の前を通り過ぎたが、
どれも私のあの人の乗った船ではない。
夕日は私の気持ちのように沈んで行き、
水面だけがゆらゆらと揺れている。


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