聞いて理解するということいついて

閲読、作文と述べて来たので、この次は当然、リスニングである。
外国語を聞いて理解する、というのもけっこう難しい。聞き取りの
できる人を、知らない人が見ると、何か手品でも見ているかの
ように、鮮やかな言語変換に感心する。しかし、聞き取っている
人から見ると、特に不思議な魔法を駆使しているわけでなく、
単に自分のこれまでの練習の成果だと思っている。泳げる人と
泳げない人の関係に似ている。
言語は「音」である。日本語も中国語も文字を有しているが、
世界中に4千とも5千ともあるといわれる言語のうち、大半は
文字を持たない。しかし、「音」を持たない言語はない。
どの言葉も「初めに音ありき」なのである。もう使う人の
いなくなった古代の言語でさえ、文字が残ってさえいれば、
音の復元がほぼ可能で、その方面の研究も進んでいる。
では、リスニングをどのように練習していくか。練習方法は、
作文に比べると、構造的には簡単である(実際に費やす時間や
努力は、作文と同じく膨大な量になるが)。
1.発音に習熟する。
2.耳で聞いてわかる語彙を増やす。
3.文法(単語の並べ方)を勉強する。

普通、これだけでO.K.で、作文のときのように「目に見えない
不文律」のようなものは存在せず、正攻法で正面からガンガン
押していけば、聞き取れるようになる。しいて付け加えれば、
時事ニュースを聞くときは、政治経済方面の単語力、お料理の
話をするときは、食材や調理法の知識があった方が、当然
聞き取りやすくなる、くらいのことであろう。
上記のうち、1.は初級段階で卒業できると思う。3.は
中級段階でなんとか処理できるだろう。2.は未来永劫、
命ある限り、努力を続けていくしかない。重要なのは、
「耳で聞いてわかる」という部分で、「目で見てわかる」単語が
いくら増えても、リスニングの足しにはならない、という
点である。最近は「キクタン」など、単語帳にも音声教材が
付いている、というありがたい時代に突入している。私の
初学のころは、単語を覚える=目でみてわかる単語を増やす、
だった。だから、自分も含めてリスニングがとても苦手、
という人が非常に多かった。
次に、いつごろ聞き取れるようになるか、という問題。夜明けの
頃とか、夏の終わりにとかいう問題ではなく、ネイティブが
ナチュラルスピードで読む(または話す)音を、追っていける
ようになるのは、学習を始めてどれくらいの頃か、という
ことである。これは当然、文の内容や学習者の勉強量によるので、
実にまちまちである。ひとつ面白いのは、私自身と3人ほどの
友人の体験では(つまりN数が充分ではないのだが)、やはり全員
「突き抜ける瞬間」を味わっている。上記の1.2.3.を
続けていると、ある日突然、中国の意味が伝わってくるときが
訪れる。それまで雑音にしか聞こえなかったヘンな音のかたまりが、
突然意味を持ち始める。驚くと同時に、脳内にはさかんに
ノルアドレナリンが分泌され、「もしかしたら、自分は天才では
ないか」というような、甘美で麗しい、しかし何の根拠もない
勝手な思い違いをすることになる。リスニング力は、右肩上がり
ではなく、階段状に登っていくのではないかと思う。勉強を続けて
いるのに全然上達が実感できず、それでもしつこく続けていると、
突然、突き抜けたように前方の視野が広がる、しかしそのあとは、
またすぐ閉塞状態に戻り、停滞する。それでも文句を言いながら
続けていると、またある日突然・・・という繰り返しではないかと
思う。停滞期間が長ければ、ジャンプする高度も高くなる。まあ、
努力と結果は最終的に正比例するのだが、途中段階ではかなり
ギクシャクしていると思う。自分の経験で、最初にまとまった
ニュースを聞き取れるように突然なったのは、15年ほど前で、
日本やノルウェーなど捕鯨国の捕鯨を制限する目的で、
ジュネーブで開かれた国際会議の内容を報じるものだった。当時は
CDやDVDプレーヤーなどなく、カセットテープを4回くらい
ぼんやりと聞いていて、録音の音が、突然意味を持ち始めたので、
本当にびっくりしたのを今でも記憶している。ジュネーブなどの
地名やシロナガスクジラやゴンドウクジラとかいう単語も
はっきりと聞き取れた。
とにかく聞き取れるようになると外国語は楽しい。次は
ネイティブとの会話にもつながっていくからである。

★本日の一文
顺境造就幸运儿 而逆境造就伟人
順境は幸運児をつくり、逆境は偉人をつくる

にほんブログ村 外国語ブログ 中国語へ
にほんブログ村