閲読について

外国語で書かれたまとまった文章を読む(解読する)ということは、
学習上、とても有効な手段であると同時に、大きな楽しみの一つだ
と思う。外国人が書いた文章を読めるようになると、新鮮な知識が
得られたり、今まで知らなかった異文化に触れることができるように
なり、とにかく楽しい。もちろん、ある程度読めるようになるには、
ステップを踏んでいかなければならず、時間のかかる作業ではある。
閲読に関する自分の考え方を述べてみたい。
1.準備段階
勉強し始めのころは、やはり使用しているテキストを中心に、
中国語の文章に慣れることが大切である。テキストの分量にもよるが、
なるべく繰り返し音読して、全部暗記してしまうのがよいと思う。
この段階では、理屈で文章を分析して理解するよりも先に、丸暗記
してしまうほうが効果が大きい。最初は抵抗があるかもしれないが、
暗記量が多い方が、後から本格的に閲読を開始するときに有利だと
思う。暗記量がある程度たまった時点で、暗記した例文を、今度は
文法的に分析理解しておくと更に良い(「理論と実践」の記事の
ときにも書いたとおりである)。
2.語彙力
仮にエッセイなり、小説なりに出てくる全ての単語が辞書に
収録されていて、わかりやすく解説されていたとしても(本当は
そんなことはありえないのだが)、語彙力が不足していては
閲読は困難である。鶏が先か、卵が先かの議論になるが、閲読を
通じて語彙力を養っていくか、単語リストで語彙力を増強してから
閲読に進むか、いずれにしても閲読と語彙力は密接な関係にある。
普通に新聞の記事でも読もうとすると、5000語くらい知って
いないとおぼつかない。もちろん、それでも特殊な語彙は
あいかわらず出てくるので、辞書を引きながら、読み進んでいく
ことになる。この作業を面白いと思うか、面倒でつらいと感じるか、
運命の分かれ道である。よく「基本単語1000語だけで書かれた
小説」とかいうものがあるが、あまりお勧めしない。会話でも
1000語限定で話します、とかいう人がいないように、使用語数
を抑え込もうとすると、どうしても不自然さが残り、他の部分に
ひずみが出てくる。リスニングもナチュラル・スピードの素材が
よいように、読み物も制限を加えられていないものの方がよいと思う。
3.文法の知識
長文になると、つながり具合、切り具合がわからず、意味を取るのに
苦労することが多い。また中国語独特の「補語」の使い方にも
慣れておくと、特に会話が挿入されているような読み物では役に立つ。
テキストによる構文に関する知識の習得もしておかなければいけない。
これは上記1の準備段階からの継承になる。文法の知識はとにかく
強力な味方になる。
4.読む対象
やはり根気よく読み進めていかなければいけないので、自分の興味の
持てる題材を選んだ方がよい。エッセイや超短編小説なら、読了に
たどりつきやすく、達成感を味わいやすい。超短編小説は取り寄せに
なるかもしれないが、エッセイなら英語の「リーダースダイジェスト」を
まねた「读者」という雑誌が出ており、けっこう、あちこちで手に入る。
中国なら街頭の新聞スタンドで売っている。ひとつひとつの読み物は
短いが、全体の分量的には1冊で相当楽しめると思う。私も一時、熱中し、
さんざん読み散らかしたが、内容が勧善懲悪のステレオタイプなので、
飽きてしまった。本格的なエッセイなら余秋雨さんとか、専門の
エッセイイストの作品もあるが、このクラスになるとエッセイといっても
かなりの長文になり、語彙の要求レベルも一段と高い。面白いと
思ったのは、お料理のレシピ。これは超短文なので、あっという間に
読了できる。豊富なカラー写真入り、見るからにおいしそうで、
食いしん坊にはたまらない。でもたいてい、ものすごい文語調で書かれて
いるので、気に入らない人も多いかもしれない。あと、単語も偏りがち
なのが欠点である。
それから大学受験生の書いた入試のときの「作文」答案(中学生、
小学生のもある)を集めて国文科の教授が添削している参考書。
「600字以内にまとめよ」とか書いてあって、
全国各地の優秀作文が集められているため、文章は本当に素晴らしい。
分量的にもそう多くないので、読了には苦労しない。パターンに
はまっていない分だけ、「读者」より活力があり、新鮮である。
中国の書店では、受験参考書コーナーにうずたかく積んであって、
種類も驚くほど多い。おすすめできる。
5.速読と精読
時間が許せば、同時進行で2つを進めたい。精読は、単語を丁寧に
辞書で引き、使えそうな文章が出てくれば、書き留めたりする。
意味もしっかりと取れるまで熟読する。まさにインプットの時間である。
速読は正反対で、スピード最優先、だいたいの意味さえ取れれば
(場合によっては、雰囲気さえわかれば)気にせずどんどん前へ進み、
ひたすら読了を目指す。これで普通の長文とまとまったストーリーに
慣れるようにする。中国では、村上春樹さんや三島由紀雄さんの小説が
翻訳で出ている。このまえは、黒柳徹子さんの「窓際のトットちゃん」も
見つけた。先に日本語で読んでおけば、速読のときにも精読のときにも、
大きな助けになる。


★ 本日の一文
只有不可知,不可得的,才有人去追求
知らないもの、得られないものがあるからこそ
人は追求しようとするのだ、

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