イントネーションと区切り

自分が話す外国語が、相手に通じるかどうか、非常に気になる
ところである。せっかく勉強した外国語を話してみて、通じ
なかった、という経験は誰しもお持ちではないだろうか。
考えられる原因を書き出してみる。
1.発音が悪い(中国語で言えば、ピンインが満足に読めない)
2.語彙が少なくて言いたいことが表せない、または間違っている
3.イントネーションが悪い(中国語で言えば、四声ができない)

1.と2.はすべての言語において共通で、当たり前と言えば
当たり前である。3.はどうだろうか。日本語には四声がないから、
当てはまらない、と思っている人が案外多いのではないだろうか。
ところがどっこい、イントネーションについてだけ言えば、、
外国人学習者にとって、日本語の方が中国語より難しい、というか
不親切である。中国語の方は声調符号というマーカーが決まっていて
それを規則に従って、読めるようになれば、それでO.K.、卒業である。
日本語にも高低アクセントがある。中国語のように同音節内で高さが
変化しないだけで、全ての音節は高低のうちのどちらかに属する。
「りんご」は「り」「ん」「ご」の3音節で、標準語では、
低高高に読む。関西の方言では真逆で、高低低に読む。これらには
一切、なんの符号もついていない。外国人は、ひとつひとつ覚えて
いくしかない。でも、別に間違えても通じるんじゃないの?と
思われるかもしれないが、これがなかなかそうともいえないのである。
たしかに中国語に比べれば「間違えてもかまわない度」は少しだけ
高いかもしれない。しかし、私は外国人が間違えたばかりに、
日本人に通じなかった現場を何回も経験している。あるとき、
中国人が「紅葉狩り」と言った。「も」「み」「じ」「が」「り」で
この5音節は、標準語で低高高高高に読む。ところがこの中国人は、
「紅葉」と「狩り」で覚えていた。2つの部分に分けると、それぞれ
高低低と高低である。そのまま変調させずに読んだため、個々の音の
発音はとても上手だったのに、聞いた方の日本人は一瞬キョトンと
してわからなかった。その時の話の流れの中では、「紅葉狩り」は
唐突すぎた。こういう場合、よほどしっかりと正しく発話しないと、
やはり通じない、という現象が起こりうる。「秋になったら」とか
「去年の秋は」とか上手にまくら言葉を補っていれば、あるいは
通じていたかもしれない。上記のような変調規則について、上手に
正しく、外国人にわかるように説明できる日本人はあまりいない。
(三省堂の明解国語辞典はすべての単語に、アクセント表示が
ついているので、中国の日本語学習者には人気がある。いつも
おみやげに買ってきてほしいとねだられる)
「日本では子供でも上手にできているのですから、あなたも
そのうち慣れますよ」とかいって、責任を逃れるしかないのである。
標準中国語の変調規則は、そこへいくと、かなりシンプルで、
第3声にまつわるものを中心に、「一」とか「不」の字の変調
規則を覚えてしまえば、オシマイである。

4.区切りが悪い
もうひとつ、「上手に区切る」ということも、通じるかどうか、
という点で、重要な要素になってくる。
A「私は学生です」
B「綿・シワが癖・井出・巣」

上記両方とも発せられる音は酷似しているが、Aは通じても、Bは
何のことかわからない。我々が中国語の文章を読み上げるときも、
Bのようになっていないか、常に注意が必要である。してみると、
発音が大事、四声が大事、といっても、意味のカタマリを
しっかりと把握して発話しないと、やはり他の要素と同様に
コミュニケーションに齟齬が生じる可能性が高いということに
なるのだろう。

★本日の一文
"稳妥"之船从未能岸边走远

「穏当」という名前の船は、決して岸辺から
遠く離れることができない。

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