中国語の辞書 その3

中国語の辞書の紹介を続ける。7冊目から。

7.白水社中国語辞典

語学本をシリーズで出すのが得意な白水社の辞書。エクスプレス
シリーズなどは有名でご存知の方も多いと思う。私の学生時代は、
フランス語でお世話になったが、中国語関係の出版もそこそこある。
主編者の老先生の講義を1度だけ、受けたことがある。もう、今は
見ることのできない古いタイプの学者で、体全体から、「執拗さ」が
漂っていた。この辞書も、そのしつこさが体現されたような内容で、
各単語の説明がものすごく詳しく、コロケーションの説明や、
例文例句が豊富で、単語の持つ意味だけでなく、その雰囲気と
ニュアンスをなんとか伝えようとする努力がにじみ出ている。
コラムなどの便利記事がない代わりに、同等以上の内容が、
各単語訳のところに書かれている。老先生亡き後、受け継いだ現在の
主任教授はいみじくも、「老先生が亡くなったので、この辞書は
世に出ることができたのである。」と語ったらしい。老先生は、
ことほどさように、しつこくしつこく、各語の修正・校正を繰り返し、
なかなか脱稿することを許さなかった。いわくつきの辞書である。
とにかく、語の説明に命をかけたような辞書なので、見出し語数は
思い切って削ってある。5万4千語しかない。ただし例文は軽く
11万を超える。欠点は、やはり見出し語が少ないこと、それに
なぜか印刷が薄くて、老眼の人には厳しい点である。私は
この辞書の説明をじっくり読むことで、語感を磨こうとしている。
2001年の初版以来、改訂版が出ていないのが気になるところである。

8.光生館現代中国語辞典
5、の角川の辞典と同じ編者の辞書である。光生館は、中検の過去問集の
出版で有名な本屋さんだが、最近は新興勢力に押され、元気がない。
この辞書はなんと1981年の初版以来改訂がなく、「現代」の文字が
むなしいほど、現代とはかけ離れた存在になっている。発売当時は初の
本格的中国語辞書として脚光を浴び、事実、当時としては非常に優れた
辞書であったと思うが、皮肉な言い方をすれば、他にはロクなものが
なかった時代の産物なのである。姉妹編として「簡約版」も出ていたが、
もう廃版かもしれない。見出し語は13万語と、非常に豊富で、よく
使われる補語の表現も見出し語に採用されているなど、ユニークな一面も
ある。歴史的役割をほぼ終えてしまったような辞書であるが、私が
愛用している理由は、60−70年代の文革の混乱期とその収束に
向かう時期、その後の改革開放時代の幕開けの時期、これらのときの
世相を反映した言葉や用例を、この辞書で見つけることができる
からである。現代の文章でも、上記の時代にかこつけた表現や引用が、
しょっちゅう出てくるので、この辞書に助けられることが意外に多い
のである。

以上が、新出単語に出くわしたときに必ず引く8冊の辞書であるが、
更に入門者用の辞書を2冊紹介する。
9.基礎中国語辞典
珍しくNHK出版から出た辞書である。中検の大御所、上野先生の手に
なる辞書で、初学者対象なので、記述が丁寧、用例は先生が全て自ら
当たられたものばかりで、他からの引き写しが一切ない。語の選定も
慎重なので、本格的な辞書に入る前の段階の辞書としてオススメできる。

10.汉语学习词典
書名からして簡体字なのが泣かせるが、中国語関係では人知れず
頑張っている朝日出版社の辞書である。著者は有名な相原 茂先生
である。コラムや挿絵が乱舞する、とても楽しい内容で、辞書か絵本か
わからなくなるほどのビジュアル感覚である。説明や重要語表示も
さまざまな工夫が凝らしてあり、最近のものは、CDまでついている。
学習辞典として、至れりつくせりの内容で、見出し語は1万語、
初級段階では充分だと思う。話はそれるが、私がお世話になっている
shrimp先生のネット勉強会では、「壱萬語会」というのがあり、
その目的は、テストや練習を通じてなんとこの辞書を丸ごと全部、
暗記して、1万語の語彙力を身につけてしまおうというものである。
http://www.h7.dion.ne.jp/~shrimp/10000gokai.html
関心のある向きは、是非、訪問してみて欲しい(続く)。

★ 本日の一文
不要问别人为你做了什么,
而要问你为别人做了什么
人が自分に何をしてくれたかは問うな
人のために自分が何をしたかを自問せよ。

にほんブログ村 外国語ブログ 中国語へ
にほんブログ村