中国語の辞書 その2

中国語の辞書の紹介を続ける。5冊目から。
5. 角川書店中国語大辞典 上・下巻
巨大な辞書で、しかも2巻本である。各1冊の重さは3kgある。
大きさを見てもらうために、写真を掲げる。比較に使っている
のは、1.の講談社の辞書である。


見出し語がいくらあるか記載がない。使ってみた実感では、
2.の小学館の倍ぐらい、つまり、20万語ほどでは
あるまいか、と思う。残念ながら、2版とかの改訂版も
出ないまま、絶版になってしまった。主編者は、中国語
検定協会の前任の責任者の方で、すでに物故された。
また編集委員も錚々たるメンバーで、これまた他界された
先生が多い。まず、この辞書の欠点の方から論う。
+図体がでかくて、重い。持ち運びにはこの上なく不便。
+値段がべらぼうに高い。これ以外の中国語辞書は全て
1万円以内で買えるが、これは軽く5倍はする(私は
発売当時、外地にいて空輸で取り寄せたため、更に
その倍ぐらいかかった)。
+1993年の発行で改訂がないため、新語採録という
点では、著しく劣る。
+上の欄外に、そのページに出てくる漢字親字の一覧が
出ておらず、膨大な字の海から、目指す字を見つけるのに
骨が折れる。その他、初学者を全く対象としていないため、
 工夫がなく使い勝手が悪い。最近発行の辞書とは好対照。
主編者は「読んでも楽しい辞書を目指した」などと、
ノーテンキなことを前書きで述べているが、さすがに
この辞書を「読もう」とする人はこの世の中にいないと思う。
しかし、さまざまな問題点はあるものの、この20万語パワーは
やはりすごい。93年当時の中国語世界の中にあるものなら、
何でも記載されているのではないか、と思わせる。生物学、
機械工学、政治経済、芸能、近世白話、方言語など、驚くべき
情報量になっている。私はつい先日も出張中に読んでいた
書類で「他车间里的路子比谁都野。」という
文にぶちあたり、携行していたカシオのGP7350では解決せず、
ケータイメールで各地のインフォーマントに聞きまくっても
わからず、困っていたのだが、帰宅後、この辞書を引いて
疑問はあっさりと氷解した。この「野」は河北省の方言で、
「多い」という意味であることを知った。「彼は生産現場では、
誰よりもコネが利く」。こういうことが頻繁に起こるので、
完全に時代遅れの辞書だが、私は絶対に手放せない。

6. 東方書店東方中国語辞典

中国語専門書店として有名な神保町の東方書店の辞書である。
たしか、広東語とかの姉妹版も出ていたと思う。見出し語は
4万2千語で、いろいろな工夫がなされていて、使いやすい。
また例文は、大胆に文語調のものも多く取り入れており、
類書にない独自性を打ち出している。私はこの点が非常に
気に入っている。最重要、重要、次重要語には印がついていて、
8千語が該当する。欠点はずっしりと重い風袋の割に、
収録語数の少ないこと。4万2千に抑えて、他の面で、学習者に
親切な「類義語の使い分け説明」など、コラムを充実させようとの
意図と思うが、いかんせん、この語彙数では、あちこちで支障を
きたしてしまう。2004年発行で、改訂版の類はまだ
出ていない。このまま消えていくのは惜しい気がする(続く)。

★ 本日の一文
世上没有绝望的处境,只有对处境绝望的人。

世の中に、絶望的な状況というものは存在しない。
ただ、状況を前にして絶望している人がいるだけだ。

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