2文字の単語の分析 動詞編 その3

動詞編の最終回は、補足説明と特異な単語について。
形容詞編で紹介した「卖钱」は、「いい値段で売れる」という
意味のほか、「売って銭にする」という動詞の意味もある。

我的表还能卖钱
僕の時計は、まだ売ってお金にすることができる

VO構造だと思ってしまうと「お金を売る」という解釈になるが、
古銭商でもない限り、まず使わない表現なので、やはり上記の
ようにイディオムっぽく訳す場合が多いと思う。
この「卖」という動詞は非常に慣用表現を形成しやすい。
形容詞のところで紹介した「卖座」を始め、「卖力气」、
「卖嘴」、「卖关子」,「卖人情」などたくさんある。是非辞書で
確認されたい。

特異なものとしては、「鱼肉」という動詞がある。こんなの
どこからどう見てもN + N型の名詞にしか見えないが、立派な
動詞である。意味は、「虐待し、食い物にする」。おそらく
もともとは「以--为鱼肉」の形であった、つまり「魚や肉のように
食べてしまう」が、「魚や肉のように扱う」→」「”魚肉”する」
というふうに変化してきたのだろうと思う。

鱼肉人民
人民を食い物にする

書いていて、「草菅(jiān)人命」という成語を思い出した。
この「草菅」も、「クサとスゲ」で、明らかに名詞の羅列だが、
このように表現すると、「人の命をまるで草や菅でも刈り取るか
のように、次々と虐殺する」という意味の動詞になる。

中国語には、動詞の語尾変化、名詞の格変化、日本語のような
助詞の膠着など、構造解明に役立つ要素が殆どない、いわゆる
「孤立語」と呼ばれるグループに属する言語である。親戚筋と
しては、チベット語やタイ語が挙げられる。孤立語では、その
解釈上、語順が最も重要な位置を占め、その次に重要なのは
単語の中に入っている文字の構成で、これらによって全体の
解釈が決定される。従って、「文法の説明」とか言う話になると
中国語は非常にややこしい。ロシア語と中国語の日本人初学者
同士が学習進度を競争すると、最初は中国語学級の方が、
リードする。見慣れた漢字がちょこちょこと出てくるので、
字ヅラを追っていけば、なんとなくわかった気分にすぐ
なれるからである。ロシア語の方は、見慣れないキリル文字を
読まされ、軟母音など難しい発音を練習させられ、更に膨大な
動詞の変化と、名詞の格変化を覚えさせられるので、初級段階で
脱落者が多く出る。しかしここを乗り切れば、形勢は一気に逆転、
ロシア語の方は豊富なマーカーに助けられて、長文でもスラスラと
読めるようになり、加速的に上達する。一方、中国語の方は
長文だの文言文だのが出てくると、もはや日本語の
漢字知識だけでは全く手に負えなくなり、「ああ、中国語ですか。
昔、少しだけかじったことがあります。」というような、なんとも
悲しい「中途退学者」や、継続はしているものの、いつになったら
使えるようになるか目処の立たない「さまよえる中級人」が
量産されるのである。

問題克服のためには、語彙力増強と同時に、単語の分析が
不可欠だと、切に思う。


★本日の一文

金以刚折,水以柔全
山以高陊(duó),谷以卑安

金属は固いから折れ、水は柔らかいから壊れない。
山は高いから崩れ、谷は低いから安定している。
人も柔軟に、いばらず謙虚に過ごすのがよい。


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