同形異義語その2

同形異義語については、読んで面白い雑学、中国語に関する話の
ネタのような形で扱われることが多く、出版物もこれまで大体、
その手のものばかりだった。今日、ここで紹介する1冊は、
その意味で画期的な試みの参考書である。大げさに言えば、
このアイテムを学問の領域にまで高めた初めての本である。

日中同形異義語1500 国際語学社 郭明輝 磯部祐子 
谷内美江子 共著 2800円+税

1500語を集めた、というべきか、1500語に絞った、
というべきかわからないが、中身を詳しく見た感想としては、
やはりかなり物足りないと言わざるを得ない。編集方針として、
日本語配列の辞書形式になっているものの、日中両国の学習者を
対象としており、説明文は日本語がメインながらも、小さな
活字で中国語の説明が横にくっついている、という展開である。
日本語を勉強している中国人もどうぞご参考に、という
老婆心なのだろうが、この点がたぶん、この本の魅力を
半減させている原因ではないだろうか。この本では、同形
異義語を4タイプに分類している。
1.同じ意味の部分を持ち、かつ日本語の方に異なる意味が
  あるもの(同義+日)
2.同じ意味の部分を持ち、かつ中国語の方に異なる意味が
  あるもの(同義+中)
3.同じ意味の部分を持ち、かつ日中両語に異なる意味が
  あるもの(同義+中+日)
4.同じ意味は持たず、両語にそれぞれ異なる意味が
  あるもの(中+日)

下記は、私が前回の記事で行った分類である。
A.全く意味の異なるもの。中国語の「汽车」のように
B.意味的に重なる部分が多いが、中に別の意味も
 含んでいるもの
C.ほぼ同じ意味なのに、品詞が異なっていたり、
 褒貶などニュアンスに差があるもの。

4.とA.は完全に重なるけれども、後の部分はかなり異なっている。
それは私の方が日本人中国語学習者として書いているからで、
両方平等の立場であれば、当然1〜4の分類にならざるを得ない。
それは理解できるが、すると何が起こるかというと、上記の1型が
大いに問題になってくるのである。1型は日本人学習者にとって、
何の意味もない。はっきり言って不要である。以下に1型の例を
挙げる。

・側面
(同義)ものの左右の面 (日)いろいろな性質があるうちのひとつ
・撤退
(同義)軍隊が陣地を取り払って退くこと(日)会社が拠点を払って
 退くこと

見れば明らかなように、日本人にとって、(日)の部分は余分で
(つまり、日本人にとっては、異義語ではない)、この1型が
多数を占めているため、1500語のうち、けっこう不要部分が
多い、ということになる。また中国人日本語学習者にとっては、
全く同様の理由で2型は不要であろう。私の感覚では1500という
数字はかなり少ないと感じているわけで、更にその中に不要部分が
多い、となると、ウーン、困ってしまうのである。中国人も
同感である、と推察されるので、全体としてなんとも中途半端、
不完全燃焼の出来上がりになってしまっている。事実、当然
収録されているべき異義語がかなり多数、欠落している(前回の
記事で例に挙げたような異義語はほとんど載っていない)。
ここは一番、思い切ってどちらかに絞るか、または2種類の本を
別々に出版すべきではなかったか。狙いは鋭く、切り口が新鮮だった
だけに、方針に問題があって、このような結果になってしまったのは
非常に惜しい。さもなければ、上級学習者必携の名書になっていた
はずだからである。


★本日の学習進捗状況
「300例」は折り返し点通過も、なお3,4日分ビハインド。

1.単語帳(Campus Wide)
11冊目 30ページ目(全69ページ、1ページに30単語)

2.論説体中国語読解力養成講座
83ページ目/132ページ

3.中国語表現300例
81ページ目/156ページ


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